001.Rickie Lee Jones / Rickie Lee Jones (1979)


Rickie Lee Jones


ギターケースとぺらぺらのボストンバッグだけを抱えて、ま夜中、無人の交差点で街灯を横切ってゆく女の子の姿が浮かんでくる。毎日バイトしながら詩を書いたり、油絵をかじったり、ジャズシンガーのまねごとをしてみたりなんかもして、うまいねなんて言われたりもしててそこそこ楽しい、それでもどこかに行っちゃわずにはいられない。無人駅で夜行を待つのだろう。時刻表なんて鼻から見てもいない。たばこ一箱吸い終わる前に来るだろうか…。


ヒットにもなった一曲目「恋するチャック」のごきげんで洒落たイメージが強い一方、アルバムの中ではバンドとスイングする陽気な曲とピアノやギターからこぼれ落ちたような曲が半々くらいに共存しています。友達と酒飲んでばか騒ぎしてても実はどこか冷めてて、一人で部屋に帰ってくると寂しい、みたいな、そんな情景、横顔を想像してしまって、たぶんそこがたまらない魅力になっています。もちろんSteve GaddやNick DeCaro他という信じられないバックバンドの表現力もすべてがバランスよいです。使い古しのたとえですが、まさにこれこそ映画を見ているかのようですよ。


○Night Train
小節も歌詞も気ままに飛び越してしまう彼女のスキャットは、ひとところに留まらず列車のライトにさらわれてゆきます。ごう、と、振り返ったときには、もう行ってしまったあとです。