010.溺れたエビの検死報告書 / アノマロカリス (2013)



甲殻類がこわい。食べ物の好き嫌いという話ではなくて、単純にその姿かたちがサイエンスフィクションすぎてこわい。大阪の海遊館にあるタカアシガニの水槽はまったく目玉スポットでもなんでもなく、ただただ数体がこちらを向いてたたずんでいるだけなのですが、そのじっと整列した姿からは統率された侵略型ロボットを思わせる異様な威圧感を感じさせます。深海には巨大な母船みたいなカニが居て、そこから派遣されてきてるんじゃないだろうかとか。ビームとか出せるんじゃないだろうかとか。



このように、カニ系はロボットとか宇宙船。一方、エビ系はというと知性があってカニ系を指揮したり操縦したりするエイリアン的なイメージがあります。この「溺れたエビの検死報告書」はまさにそのエビたちの軍団なのでしょう。アップライトベースをギコギコするリーダー格のエビを中心に、パーカッションを重く打ち鳴らすエビ、ブラスで煽り上げるエビ、揺れるエビ、踊るエビ…が海底一億マイルの宇宙よりぞくぞくと進軍してきます。「な、なんだあれはー!」という監視塔の隊員(直後、無線の向こうで惨死)の叫びが今にも聞こえてきそうです。


パーカッションが活躍する感じはザッパを、でっかく黒いかたまりがうごめく様子はクリムゾンを思い出したりもしますが、展開やリズム構成はさほど難解でなく、ひたすら数を増やしながら行進してくる画が浮かびます。メロディ要素も薄くあくまでもそのルックスやパフォーマンスありきの世界なので、音源だけで聴くとどうしてもサントラみたいな印象ではありますが、今後エビが食卓に上がるたびに脳内で流れ出すことは確実な音楽だと思います。


ちなみにこわい甲殻類3傑は以下です。
3.タカアシガニ(上記。乗り物系ロボットぽくてこわい)
2.ヤシガニ(オートマチック系殺戮マシンぽくてこわい)
1.カブトガニ(なんかもう意味不明でこわい)


○外骨格
縁を切りたい甲殻類アレルギーの人が周りにいる場合は、一緒に彼らのライブを観に行けばいいんじゃないでしょうか。