004.Atoms For Peace / Amok (2013)


Amok


2010年のフジロックで見たAtoms For Peaceは、なぜかトリコロール柄のはちまきを締め、アンガールズ風に着こなしたタンクトップ姿で奇天烈音頭にいそしむトム・ヨークさんの姿が印象的でした。ヒキヲタの最高昇華形態といえるであろうその音圧はとてつもなく暴力的な格好良さがあり、音だし一発目にてグリーンステージがわっと揺れたさまは忘れもしません。*1


その印象からすると、今回いよいよ!とアルバムという形で聴いた感想は「あら、よくおまとめになったのですね」というのがはじめのところでした。なんだか整頓されているというか、そこまでレディへ信者でもない自分にとっては既出のエレクトロニカ寄りに回帰した程度の聴こえかただったのです。


しかし、実はこれは、もともとあった「エレクトロに対する人力(生楽器)での再現」というコンセプトが洗練され続けてきたことでその距離感が狭まり、ぶっちゃけ違いがなくなるほどになったということなのだと思います。もうメカ・人間という対立構造ではなく、新種のミュータント的質感があるわけです。正直もうちょっと解りやすくバッキバキのものが飛び出す期待があったので気づくのにしばらくかかりましたが、これはこれですごいことです。


表面的にはキッドA以降、あるいは他のエレクトロニカ、ポストロック勢の音楽で使われてきたような「あるある」なクラックビートやシンセが聞こえてくるのですけれども、冷徹なサイボーグ的甲殻の内側で虎視眈々とモンスターが爪を研いでいるような緊迫感があり、やはりこれは唯一無二なのではないかと思います。そこへ、お得意のSFぽい荒涼とした空気のなかトム・ヨークの歌がもはや預言者のごとく登場し、フューチャー涅槃とも言うべき終末世界へ案内してくれるという寸法。実はけっこうポップな歌メロも出てきたりして、ほいほい着いていってしまいそうです。ライブのような爆発はありませんが、徐々に血流が加速し細胞が不安に拡張していく快感。結果、かっこいいと思います。(でもやっぱり次はもっとバッキバキのもほしいですください!)


○Judge, Jury and Executioner
奇数拍子っていいよね…!
それにしても、何も知らん人が聴いたらまさかこの抑制の利いたベースを担当しているのが半裸のち半ズボンときどき全裸というスタイルで世界を股にかける前歯がない男*2であるとは到底想像し得ないのではないでしょうか。さすが多才です。

*1:ここまですべてがほめことばです。

*2:http://en.wikipedia.org/wiki/Flea_(musician)